http://www.geocities.jp/art_1ro/_gl_images_/dino_comic_for_c4_5.jpg
帰った私は先輩達とモニターを見守り続けた。
ボードに這い上がった原人は動こうとせず、重い空気が周りを包んでいる。
耐えきれず私は口を開いた。
私:「そういえば知ってます?『地球』には今も先輩達崇める人が一杯います。でもかえって争いのタネになってるみたいですケドね」
イエス:「ん?オレ達のせいで戦争絶えないってコト?まったく懲りないなあ、あの生物は」
アラー:「ほんとだよ。だいたい何でも自分たちで余計な肉付けして膨らませるからなあ。おまけに勝手な解釈他人に押し付ける」
ヤハウェ:「UFOやミステリーサークルもそうだったよなあ。自作して騒いでたもんなあ」
イエス:「聖書だってそうさ。最初はうっかり落っことしたオレの観察日誌を最後にゃほとんど自分達で付け足して『聖典』にしちゃってさあ」
アラー:「あれはオマエさんの不注意だゾ、罪なことするよ全く」
イエス:「でも逆に疫病や地震なんかプログラム上のバグで仕方ないじゃないか。なのにオレ達与えた『試練』なんて勝手に思いこまれてもなあ」
ヤハウェ:「ま、確かに言葉も完全に理解出来るワケじゃないから祈られても困るしな」
私:「じゃせめて今度、神様当人達は皆仲良しなんだって伝えときましょうか」
イエス:「そうだな。戦争やめろってな」
アラー:「自分の問題は自分で片付けろってコトもな」
ヤハウェ:「そういうこと。オレ達神様だってここじゃ苦労はどっさりあるんだ。でも逃げず頑張ってる。『お布施』で幸せ買うなんて『袖の下』さ」
私:「ちょっとちょっと、そんなに再就職に行き詰ってるんですかあ?」
ヤハウェ:「まあな。ここの仕事は潰し効かないからな。でもま、なんとかなるさ。それよりさ。この原人観てると海行きたくなってこない?」
イエス:「なるなる。実はオレもそう思ってたんだ。呑みヤメて海行くか?久しぶりに?」
アラー:「いいねえ~。じゃ賭けよ!」
ヤハウェ:「何に?死んだら『呑み』、乗ったら『海』とか?」
イエス:「いいねえ、それ乗った!じゃ流されず波つかまえ無事岸に辿り着いたら海行こう海」
実験室の空気が少し明るくなった。正直いうと私も久々の海に胸が躍った。
そんな能天気な私たちと対照的に。原人はといえば…
ボードの上でまだ呆然としている。巻いてくる大波。じっと眺めている。「恐怖」と戦っているのだ。
まだ彼には「祈る」という概念はない。そしてあきらめ「自殺」するという概念すらないはず。
もっと無垢な生命なのだ。ただ対処する「自分」があるだけの…。
(あとは自分の力で波をつかめ!)
先輩達も同じ思いなのか皆黙ってモニターに見入っている。
しばらく後、思いが通じたのかゆっくりと原人が立ち上がりパドルを漕ぎだした。
後ろから大波が迫る…!
「よし!いけ~!!」皆で叫ぶ。
それはまるで自分たちの何かを託すかのような声だった。
<つづく>
帰った私は先輩達とモニターを見守り続けた。
ボードに這い上がった原人は動こうとせず、重い空気が周りを包んでいる。
耐えきれず私は口を開いた。
私:「そういえば知ってます?『地球』には今も先輩達崇める人が一杯います。でもかえって争いのタネになってるみたいですケドね」
イエス:「ん?オレ達のせいで戦争絶えないってコト?まったく懲りないなあ、あの生物は」
アラー:「ほんとだよ。だいたい何でも自分たちで余計な肉付けして膨らませるからなあ。おまけに勝手な解釈他人に押し付ける」
ヤハウェ:「UFOやミステリーサークルもそうだったよなあ。自作して騒いでたもんなあ」
イエス:「聖書だってそうさ。最初はうっかり落っことしたオレの観察日誌を最後にゃほとんど自分達で付け足して『聖典』にしちゃってさあ」
アラー:「あれはオマエさんの不注意だゾ、罪なことするよ全く」
イエス:「でも逆に疫病や地震なんかプログラム上のバグで仕方ないじゃないか。なのにオレ達与えた『試練』なんて勝手に思いこまれてもなあ」
ヤハウェ:「ま、確かに言葉も完全に理解出来るワケじゃないから祈られても困るしな」
私:「じゃせめて今度、神様当人達は皆仲良しなんだって伝えときましょうか」
イエス:「そうだな。戦争やめろってな」
アラー:「自分の問題は自分で片付けろってコトもな」
ヤハウェ:「そういうこと。オレ達神様だってここじゃ苦労はどっさりあるんだ。でも逃げず頑張ってる。『お布施』で幸せ買うなんて『袖の下』さ」
私:「ちょっとちょっと、そんなに再就職に行き詰ってるんですかあ?」
ヤハウェ:「まあな。ここの仕事は潰し効かないからな。でもま、なんとかなるさ。それよりさ。この原人観てると海行きたくなってこない?」
イエス:「なるなる。実はオレもそう思ってたんだ。呑みヤメて海行くか?久しぶりに?」
アラー:「いいねえ~。じゃ賭けよ!」
ヤハウェ:「何に?死んだら『呑み』、乗ったら『海』とか?」
イエス:「いいねえ、それ乗った!じゃ流されず波つかまえ無事岸に辿り着いたら海行こう海」
実験室の空気が少し明るくなった。正直いうと私も久々の海に胸が躍った。
そんな能天気な私たちと対照的に。原人はといえば…
ボードの上でまだ呆然としている。巻いてくる大波。じっと眺めている。「恐怖」と戦っているのだ。
まだ彼には「祈る」という概念はない。そしてあきらめ「自殺」するという概念すらないはず。
もっと無垢な生命なのだ。ただ対処する「自分」があるだけの…。
(あとは自分の力で波をつかめ!)
先輩達も同じ思いなのか皆黙ってモニターに見入っている。
しばらく後、思いが通じたのかゆっくりと原人が立ち上がりパドルを漕ぎだした。
後ろから大波が迫る…!
「よし!いけ~!!」皆で叫ぶ。
それはまるで自分たちの何かを託すかのような声だった。
<つづく>