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助け求める原人には悪いがおいそれと手は出せない。
研究観察対象が助けを求めてるからといって、そこへいちいち介入したのでは仮想世界の進化を歪曲させ歴史まで捻じ曲げてしまう。

以前、このプロジェクトのエースと言える「地球」観察員の中には誘惑に抗えず手を出した者もいた。が、いずれも当局にバレ今はプロジェクトを追われている。
イエス先輩、アラー先輩、ヤハウェ先輩、釈迦先輩、ゼウス先輩などなど。
特に前の三人はサーフィン仲間ということで仲も良く、アフター5には私も含めよく4人で街に繰り出したものだ。勿論、波乗りも教わった。
当時新人であった私には、皆優しく面倒見の良い先輩達であった。
それが災いしたのだろうか。救い請う人間に見て見ぬふりは出来なかったのかもしれない。情が深過ぎるのも罪なのか。
いずれにせよ今では職安通いの先輩達も、人間界では未だ慈悲深い「神」として崇められている。
本人達は知る由もないが本望だろう。

いかん、感傷に浸ってしまった。
さて。原人は…まだ捕われている! 翼竜のエサになるのは避けられないようだ。
お、ひときわ大きな活火山が大爆発した。まだ地殻が不安定なのだ、この星は。
お、しかし驚いた翼竜が原人を落としてくれたではないか!

ともあれ原人は危ういとこで助かった…かに見えたが…?

はたして彼は泳げるのだろうか?
もし泳げなければ…一難去ってまた一難ということになる。
地球の例からすると、水に落とされた場合、「猿は泳ぐ」が「人は溺れる」という。
この星の原人はどちらに近いのか。

私も先輩達の指導の甲斐あって今では週末サーファーの端くれ。泳ぎも得意なほうである。
自ら原人の前に「降臨」し泳ぎのひとつでも手ほどきしてやりたいとこだが、いや、やはり職追われた先輩達と同じ轍は踏めない。

「降臨」は禁じられているのだ。

観察規約にも「避けられない事情で対象に接触する際は《宇宙人》を装い《UFO》に搭乗、極力姿は隠すこと」とある。
人の姿で接触するなど許されざる行為だ。

そう、今はただ見守るしかない…見守るしか…「頑張れ、原人!」

<つづく>